無駄合とは?
99年12月の詰工房月例会の席で、規約問題の話ついでに、この作の存在を思い出した。詰将棋パラダイスの、当時の「小学校」(7手詰以下)のコーナーに出題された本作だが、「7手で」詰めようと思っても難しいと思う。
初手は79角打より他にない。56玉では58飛までなので68に合駒をするが、普通に歩を打つと、同飛として「左右反転して持駒が増えた」形になってしまう。詰将棋では「形が変わらなかったり、手数が延びないのに、攻方の持駒を増やすだけの合駒」を無駄合と称して、解答手順の中に含めないことにしている。さて、この図の68合駒はどうだろうか。まあ仮に68合駒が「有意義」だったとしても、同飛とした後の48合駒はどうなるのだろう。
この図を「詰将棋だ」として投稿をした私も私だが、当時の担当者である秋元節三氏も思い切ったことをしてくれたものだ(笑)。私の意図する解答もあったが、「合駒を次々に取って、玉方が香を打ってくれるのを待ちます」といった解答まであり、結局は問題作とされて解答は全て正解扱いになった。
さて、現実問題として、この合駒をルール上でどう考えれば良いのだろうか。一般的に、「駒Xを合駒として打った時、すぐ取って、駒Xを使用せずに同じ手順で詰めば無駄合」というような定義付けがなされる。一般的には手数が2手増えるが、馬鋸のように十数手増えることもある。普通に現れる無駄合ならば、たいていはこの表現で足りるのだが、さてこの図の68合を「無駄合でない」とするためには、どのように規約を書けば良いのだろうか?
左右反転形が同一図といえるかどうかは、議論の余地がある。しかし「左右反転図は同一図でない」と明言した場合は、左右対称形で初手が中心線でない作品は、全て余詰ということもできる。現在の慣習は、左右対称図でもそのような初手を認めている。
私は議論の種を提供したが、厳密な記述は降参した。エレガントな解答を求む。