全王手詰の系譜



 詰将棋パラダイスの、「幼稚園」(5手詰以下)コーナーに出題。私の作でもかなり初期のものである。
 5手以下だから、まずは解いてみて頂きたい。

 初手は74飛がうまい手に映る。92角の当たりを防いで、どう受けても43金を取れそうだ。しかし、64桂(逆王手)、同飛、54香 として、55桂をお地蔵さんにしてしまうのが切り返しで、後続がない。100人程度の解答者のうち、30人がこの紛れに引っかかった。

 作意手順は、初手43桂成である。5手詰で初手の駒取りは禁じ手といっても良く、一般的に解答者は最初に考えることはない。同飛の一手に74飛。同角なら65香、64桂は同香、他の温い合駒も65香なので、55香合が最善となる。
 私はこの頃から、かように素晴らしくインチキ臭い詰将棋を作っていたのである。

 詰将棋における逆王手の連続は、当時でも宿利誠氏作などの記録作があった。しかし双玉詰将棋自体が詰将棋の歴史上長く異端扱いされ、当時の詰将棋パラダイス誌でも「大道棋研究室」(当時)や「双玉室」(当時)といったコーナーに一部掲載されているに過ぎない状況では、こういった分野はほとんど発掘されていなかった。連続王手のまま収束する作品も、これ以前にはなかったと思われる。本作以後、それぞれ狙いの異なる2作(5手、7手)を発表したが、流行などとは無縁で、忘れられた存在となっていた。

 その後、時代を経て(という程でもないが)双玉詰将棋がほぼ市民権を獲得し、一般の将棋雑誌の詰将棋欄にもたまに出題されるようになった。そんな中で、7~9手詰の全王手詰がいくつか発表された。それらの作品は、(こういっては申し訳ないが)あまり気に留めるような内容ではなかったのだが、「9手詰が最長手数」なる記事が某書に掲載されたことに私はキレた。
 「作品として公表されたものの中では9手が最長」は事実である。しかし、私は「17手はおそらく可能、19手でどうか」と考えており、13手までは図面を作ったことがあった。発表しなかったのは内容が一本道で面白くなかったからである。


 ここはひとつ、つまらない作品の出現に釘を刺しておかねばなるまい(笑)。という訳で上の図を、詰将棋パラダイスの高等学校(13~17手)に発表した(上図・発表図から一部変更・手順は変わらない)。
 17手、19手については可能性はあると思っているが、未だ図面を得るには至っていない。

 最後になるが、全王手詰では初形が逆王手になっているものを重視する風潮があるが、私は必ずしもそうは思わない。初形を逆王手にすると、手順の性質上、全体が一本道となることが多いからである。考える要素を少なからず持たせないと、面白味を感じる間もなく解けてしまうことになる。