詰将棋をつくる


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  1. 詰将棋をつくる

    「詰将棋をつくる」というのは、いままで数々の入門書(といえるか、わかりませんが)や雑誌コラムが挑戦して、その多くが失敗したといっても過言ではないテーマです。
    なぜ失敗するのかというと、大抵の詰将棋作家の方たちは、他の作家がどのようにして詰将棋を作っているか、知らないからです。それに、誰かに教わって詰将棋が作れるようになったわけでもないのです。つまり「他人に教える」という以前に、「何を教えたら良いか」ということを言葉にすることができないわけです。

    したがって、このコーナーでもムチャなこと、つまり「これを読めば誰でも作れます」などという謳い文句は、はじめから掲げないことにします。そして、えらそうな能書きと抽象論に終始します。(と書いたら、誰も読まないか?)

  2. いわゆる「方法論」

    詰将棋を作る、その作り方を説明するとき、多く引き合いに出されるのは「逆算法」と「正算法」という、2つの方法です。逆算法とは、詰みになっている局面から1手ずつ前の局面を作っていけば、いずれは手数の長い詰将棋になる、というものです。正算法(おかしな名称なのですが、逆算と対になる語として定着しています)は逆に、適当な局面を想定して、配置や持駒を少しずつ調節しながら詰ませる(詰みのある形にする)というものです。以上はもちろん、たいへん大雑把かつ極論です。両者を組み合わせたような中間的な方法も、もちろんあり得ます。

    さて問題は、このような方法を覚えただけで詰将棋が作れるようになるか、ということですが、答えは「否」といわざるを得ません。これはまるで「日本語を勉強すると俳句が作れるようになる」というようなものです。

  3. 創作の動機

    あなたが「詰将棋を作ろう」と思う動機はなんでしょう?
    棋友の誰もが解けないような、難問を作ってみたい。
    実戦で、相手玉を詰め上げた素晴らしい手順を再現したい。
    今までいくつか詰将棋を解いたが、私ならもっとうまく作れると思う。
    詰め終えると駒配置が図形になる詰将棋があるそうだが、私にも作れそうだ。
    その他、なんでも結構です。つまりは、あなたが盤上で実現したいものは何なのか、どのような手順、どのような図面を実現したいのか、ということです。
    この動機は、独創的であればあるほど良いのです。優れた狙いを持った、素晴らしい詰将棋になる可能性が高いといえるでしょう。それぞれの動機にあう合理的な作図方法は、いろいろな図面を作っているうちに自然に覚えます。

    重要なことは、あなたはこれから歴史上誰も作ったことのない詰将棋を作るのだ、ということです。これは大げさに考えなくても結構です。そういう心積もりが大切です。

    「おとな」になってくると、もっと不純な動機で作ることもあります。「人に頼まれて」とか「余白を埋めるため」などです。動機が不純なものばかりになってくると、一般に良い詰将棋が作れなくなってきます(身に覚えのある人、いる?)。

  4. 検討をする

    さて、そうこうしているうちに詰将棋ができたとします。これからあなたがすることは、詰将棋を検討すること、つまりあなたが意図した手順が正解手順として妥当なのか検証することです。

    あなたが意図した手順(作意手順)では実は詰まないという時、それを「不詰」といいます。
    不詰の図は他人に見せてはいけません。もし誤って見せてしまったら、きちんと謝らなくてはいけません。それを見た人は、正解があるハズと思って、頭を悩ませたでしょうから。
    作意手順以外で詰んでしまった時、それを「余詰」といいます。
    双方が最善を尽くした結果の手順は、1通りでなくてはなりません。場合によって寛容に見てもらえるケースもありますが、1通りであることが望ましいのは当然です。

    きちんとした検討とは、詰将棋が余詰や不詰でないことを確認することです。理想的には、作意手順から外れた受方の手がどれも完全に詰むことを確認し、なおかつ作意手順から外れた攻方の手がどれも完全に詰まない(どうやっても連続王手が途切れてしまう)ことを確認することです。これを「完全検討」といいます。
    しかし、完全検討は膨大なパワーを消費します。ではどうすればよいでしょう。
    最も簡単なのは、誰かに見せて解いてもらうことです(見せる前には、不詰でないことを確認するくらいは必要です)。同時に、解いた感想を求めることもできるのが便利です。
    身近に手ごろな棋友がいない時には、どうしたらよいでしょう。最近はパソコンの詰将棋解図ソフトも侮れませんから、それもよいでしょう。適当なサークルに出向いて行くのも良い方法の一つです。
    しかし、きちんと検討しようとする姿勢は失ってはいけません。それは、あなたの作図・解図能力に大きな影響を与えるでしょう。

    検討作業は、「詰将棋の要件を満たしていること」を確認するだけではありません。
    他に改善の余地はありませんか? 無駄な配置があるとか、手順のよい部分だけを抽出できるとか、何十手も手数を増やすことができるとか、・・・。
    こういったことの検討は、終わることがありません。見切りも必要なのですが、満足な結果が得られずに数年の検討を続けることもあります。

  5. 新作募集欄に投稿する

    出来上がった詰将棋をどうしたら良いでしょう?
    あなたの棺桶に入れてもらうのも一つの方法ですが、まずは活字にしてみましょう。
    将棋世界、近代将棋、といったメジャーな将棋誌は、読者からの新作詰将棋投稿コーナーがあります。こうしたコーナーで、首尾よく行けば、あなたの作った詰将棋が「初入選**氏作」として掲載されます。
    しかし、あなたが最初に詰将棋を投稿しようとするなら、詰将棋パラダイス誌を推奨します。
    詰将棋パラダイス誌は、不採用となった投稿を返送してくれるシステムがあります。しかもそれは多くの場合、真っ赤(というのはオーバー?)に添削されています。これは、創作経験の特に初期においては、非常に役に立ちます。
    他誌では不採用の場合、一般に何の連絡もないので、なぜ不採用か判らず仕舞になります。
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